絵本『おしいれのぼうけん』の秘密
こんにちは!
店主の中島ひであきです。
1974年の刊行からずっとこどもたちに喜ばれた『おしいれのぼうけん』
でも、この本が出版されたときは「きっと、売れないだろう」
と言われていたそうです。
今では知らない人もいないくらいのロングセラー絵本。
その以外な船出の秘密をまずは明かしてみましょう。
「おしいれのぼうけん」が発行される当時、
黒い表紙の本は売れないジンクスがありました。
でも、作る側は黒にこだわりました。
それは、おしいれの中から始まるこわいぼうけんを表したかったから・・・・。
今日は、そんな熱意のこめられた『おしいれのぼうけん』の秘密をご紹介っ!
有名なこの表紙。
表紙をよーく見ると・・・・あれ?不思議なことに気づきませんか?
それはココ・・・
拡大してみましょう
著者名です。
ふるたせいいちさん、たばたせいいちさんの間に”さく”が書かれています。
文章を書くのはふるたさん、絵を書くならたばたさんなので、
通常の絵本なら「作:ふるたたるひ 絵:たばたせいいち」となります。
なぜ、このような表記をしたのでしょうか?
作者の古田足日さんはその意味をこう語っています。
「二人の『作』としたのは、取材の始めから二人で仕事をしている。
話の展開の中にも田畑のアイデアがあり、絵についてもぼくの意見がある、
こういうつくり方は「古田文・田畑絵」では表せないと考えた結果である。」
取材とき、多くの幼稚園を二人で見て回りました。
”二人で作った絵本”
その意味が、ささやかながらに込められていたのですね。
さて、もう一つ秘密をご紹介!
このページはおはなしの一番はじめ。
「ここはさくらほいくえほんです」のページです。
よーく、ここをみていてくださいね
あれれ、同じような場面がでてきましたね。
ここは、おはなしの最後のページ。
なにか、不思議なことに気づきませんか?
よく見ると・・・ほら、そこにあったはずのものがない。
(人の数とか車の数ではないですよ)
その不思議なことに、このおはなしの”意味”が込められています。
その秘密とは・・・・?!
もう一度、よく見てみてくださいね。
この2つの場面には、あるちがいがあります。
この本をお持ちのかたは、もうおわかりですか?
それでは、拡大してみましょう!
これははじまりのページの拡大。
幼稚園の門ですね。
開いた門には、貼り紙が。
(見づらい方は本をご覧ください。)
そして、おしまいのページ。
あれ?閉まった門には・・・貼り紙がありません!
この貼り紙にはなんて書いてあるのでしょうか?
これ以上拡大できませんので、テキストで読み上げてみましょう。
「あそびにはいらないでください」
お話のはじまりには門にそのような貼り紙が貼られていました。
しかし、お話のおわりには剥がされています。
作者はなぜ、貼り紙をはがしたのでしょうか。
それは、「おしいれに閉じ込めて反省させようとする先生が、
こどもたちを閉じ込めることをやめたその時から、
この貼り紙は必要なくなったのでは」といわれています。
剥がされた貼り紙は、
おしいれのぼうけんを終えたさとしとあきらへの、成長の証でもあるかもしれません。
絵本でも珍しい、黒い表紙に包まれたぼうけんのお話。
そして、強く・優しく、こどもたちの心に刻まれる名作。
いつまでも忘れられないのは、
きっと作者の込めた深いメッセージ
が作品の奥にいつまでも生きているからかもしれません。